「垳」の廢止に關して(中井茂雄)

區劃整理が進む埼玉縣市で、日本で唯一ヶ所「垳」を用ゐた地名「垳」(がけ)(「垳町」「垳川」等に使はれてゐる)が廢止されようとしてゐる。これに對し、地名は郷土の歴史と傳統が刻まれた貴重な文化遺産であるとして、地元有志の呼び掛けにより「垳を守る會」が結成され、五月十三日に垳町會と共催で緊急集會が開かれた。

この集會で講演を行つた大東文化大學准教の宮瀧交二氏は、地名の意義について次のやうに述べられた。

  • 歴史的な地名が殘されてゐることによつて、その地域の特質(他の地域との違ひ、具體的には地形・歴史等)が浮彫になる。
  • 地名の語源等を學ぶことににより、地域に對する愛着や誇りが釀成される。
  • 逆に、どこにでもある地名からは、かうした特質(他の地域との違ひ、具體的には地形・歴史等)は窺はれないし、地域に對する愛着や誇りも釀成されにくい。


さらに、地名の存廢は、その土地に暮す住民の意向で決定すべきであるとし、新地名の候補案の中に現行地名の「垳」も含めるべきであるとしてゐる。

なほ、今後の活動として、垳町會を中心として署名運動等を展開して行くといふことである。