文化廳の輿論調査・續

文化廳がウェブサイトで「国語に関する世論調査」の結果を公開した。敬語について以下のやうな調査がある。

学校の先生が生徒の保護者に,同僚の田中先生のことを話す場合,どういう言い方をするのが良いかを尋ねた。結果を多い順に示すと,以下のとおり。
名字に「先生」という敬称を付けた「田中先生は…」が6割強を占める。次いで名字に「教諭」という職名を付けた「田中教諭は…」が2割強となっている。

「田中先生は…」 ・・・・・ 63.3%
「田中教諭は…」 ・・・・・ 21.3%
「田中は…」 ・・・・・ 9.3%
「田中さんは…」 ・・・・・ 3.4%
どれが良いとも言えない ・・・・・ 1.0%
分からない ・・・・・ 1.8%
(平成17年度「国語に関する世論調査」の結果について)

しかし學校の教師が保護者に同僚を指して「田中先生」と呼ぶ事は、會社の社員が顧客や取引先に上司の事を「鈴木課長」と話す場合と違ひ、決して誤つた日本語ではない。兩者を同列に論ずるべきではない。「田中先生」と云ふ呼び方は、話し手である教師が保護者と同じ立場から、話題の主である田中教諭への尊敬の念を示す表現だからである。これは教師と云ふ仕事の性格から生じる現象である。

これに對し會社の顧客や取引先は、それが名も無い家庭の主婦であらうと吹けば飛ぶやうな零細企業であらうと、會社よりも上位乃至同等の立場にある。従つて會社の社員が顧客や取引先に向ひ上司を「鈴木課長」と呼ぶ事は、社内的な上下關係を外部の者に押し附ける無禮な行爲となる。

東京新聞によれば、文化審議會の國語分科會は「敬語の使い方が変わってきていることも踏まえ、十月半ばにも敬語の使い方の指針案をまとめ、意見を公募する」さうである。「田中先生」と「鈴木課長」を一緒くたにした愚かな「指針案」が出ない事を祈るばかりである。(K)