文化廳の輿論調査

Sankei Webより。

「怒り心頭に達する」という誤った慣用句を使う人が74.2%に達していることが26日、文化庁の「国語に関する世論調査」の結果で分かった。「怒り心頭に発する」と正しく使えるのは14.0%で、5倍の人が間違っていた。「従来から」「あとで後悔する」といった重複表現を気にしない人も過半数に達しており、日本語の乱れが懸念されている。〔中略〕周囲に明るくにこやかな態度を取る意味の表現は「愛嬌(あいきよう)を振りまく」が正しいが、正解者は43.9%しかおらず、「愛想を振りまく」(48.3%)の方が上回った。愛嬌と愛想の意味が似ているため混同されているという。http://www.sankei.co.jp/news/060726/sha097.htm

文化廳による輿論調査の話。NHKテレビがクイズ仕立てで報じてゐるのを見ながら、「怒り心頭に達する」は間違ひだと即座に〝囘答〟出來て内心鼻高々だつたが、「愛嬌」と「愛想」はどちらが正解か分からなかつた。お恥づかしい。

ところで今囘の調査では、敬語についても調べてゐる。讀賣新聞が社説でその點に觸れてゐるやうだが、内容に幾つか引掛かる部分があつた。

外部からの電話に、上司の不在を告げる際の敬称使用についても聞いた。〔中略〕「鈴木は…」が40%、「課長の鈴木は…」が27%、「鈴木課長は…」が25%と分かれた。職場では「ダメ」と言われそうな「鈴木さんは…」は5%だった。〔中略〕「外部に話すときは身内を高めない、という原則があるが、その中でも実際の使われ方は複数あるということ」と、文化庁は言う。http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20060726ig91.htm

外部からの電話に「鈴木さんは…」と「さん附け」で答へたり、「鈴木課長は…」と肩書を「さん」代りに附けて答へたりするのは、日本語として誤りだ。文化廳は「実際の使われ方は複数ある」などと物分かりの良ささうな事を云ふべきではない。「ダメ」な言葉遣ひは「ダメ」と指摘してやらないと、恥をかくのは國民だ。讀賣の論評にも納得出來ない部分がある。

「敬語を使いたいか」も尋ねた。「社会生活を営む上で」と「個人的な考えとして」の両方を質問し、建前と本音を探った。それぞれ、「使いたい」と答えた人が93%、84%に上った。/その理由に「必要だから」を挙げた人は、30代の働き盛りの層に多い。仕事に脂が乗ってきて、上司からの能力評価も気になり出すころだ。正しい敬語を使う必要性を意識するのだろう。

日本人が敬語を使ふのは、要するに職場で出世したいからだと云はんばかりの解説である。日本人は公私を問はず敬語拔きでは意思疎通が出來ないと云ふ本質を語らず、問題を矮小化してゐる。「上司の能力評価」なんぞ無縁の不良少年でも、仲間内で先輩後輩の序列を無視した言葉遣ひをすればどう云ふ目に遭ふか良く知つてゐるではないか。(K)

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